誓契

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番外編



お題 リライト
10のちいさな幸せ より

----綺麗な夕焼けのコントラスト----



「あれ・・・おかしいな」
冷蔵を覗き込むとあると思った葱が一本も無かった。
ある筈だと探すが、まったく見つからない。
探している間に時間は過ぎて行き、ピピピと冷蔵庫から警告音が鳴る。

「・・・買ってこようかな」
ぱたんと野菜室を押し込みながら呟いくと思案した。


今日の夜ご飯はすき焼き。
葱が無いと作れない。

他の料理を作れば済むことなのだが、テレビで見たすき焼きに興味津々な二人が居る為是非食べさせてやりたい。

ちらりと時計を見るとまだ時間がたっぷりある。



自分の部屋に戻りコートをクローゼットから取り出す。
最近少し冷えるので念の為。
部屋着である楽なズボンからジーンズに履き替えて髪の毛を梳かし簡単に結ぶ。
「ちょっと出掛けてくるねー」
財布が入っているバックを肩に掛けてリビングで絵本に集中している二人に声を掛ける。
すると、ルルが目を輝かせて顔を上げた。

「ぼ・・ぼくもいきた・・・い・・ですっ」
はいっ!と手を一直線に伸ばしたその姿は・・・とても可愛い。
思わず綻ぶ笑顔。
「うん、行こうか」
それを見たヒュアはむっとした表情を浮かべた。
「俺も行きます」
「ヒュア君は駄ー目」

「えっ・・・」
いいよと言ってくる前提の問い掛けだったのだろう。
腰を浮かした状態で硬直している。
「ヒュア君、朝体調悪かったでしょ?大事をとって今日は休んでること」
「・・・だいじょ」
「いいね?」
「・・・・はい」
朝、何処と無く体調が悪そうなヒュアを説得して熱を図ると微熱があった。
もう大丈夫だと言っていたが、無理をしそうなヒュアの言葉を信じる分けにはいかない。
強い口調で遮ると寂しそうに腰を下ろした。

ヒュアは、菊代が自分を心配して言ってくれていると分かっているので、その気持ちを無碍にも出来ずもやもやとする気持ちを抱えたまま返事をした。
だが菊代が自分のことを心配してくれている・・・大切に思ってくれているという事実に少しばかりもやもやが薄れた。


「じゃあ、ルル君行こうか?」
「はぁーい」
この前買っておいたクリーム色のダッフルコートを着せると元気良く返事をした。
因みにこのダッフルコートはヒュアとお揃いにした。
また今度、ヒュアにダッフルコートを着せて3人で出掛けたい。








「うわぁ・・・」
「ふふ、行くよ?」
二回目となるスーパーにその美しい瞳をより一層輝かせている。
程よい喧騒が満ちている。

ルルは何かを探す素振りを見せると、目当ての物を見つけたのか笑顔を浮かべて走る。
がらがらとカートを押して菊代の元へ戻ってきた。

「・・・これ」
不安と、隠しきれない喜びと。
そんな感情を顔に思いっきり出しながらおずおずと言う。
「うん、ありがとう」
「!うんっ」

頭を撫でて褒めると喜色満面で頷き、菊代は癒された。




スーパーを出ると辺りは薄い赤に包まれて綺麗な夕焼け空になっていた。
葱の他にもついでに色々買っていたら沢山の量になってしまったのでルルに軽い方の袋を持ってもらっていた。

ふとした瞬間に隣をじっと見る。
赤み掛かった金髪は夕焼けでより一層赤く感じられた。
研ぎ澄まされた水色の瞳は何とも言えぬ色合いで思わず見惚れる。
それに気づいたルルが首を傾げる。
「ど・・・したの?」
「ううん、きれいだなぁって」
「?」
何が綺麗なのか分からないルルは辺りを見てからもう一度首を傾げた。










「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」
あまじょっぱい香りのする湯気がリビングに満ち、器にお肉や春菊、豆腐をよそってヒュアに渡す。
嬉しそうに礼を言うと早速豆腐を食べに掛かったが苦戦していた。
「ふふ、大丈夫?」
「だ・・・大丈夫ですっ・・・」
ヒュアはそう言いながら小さくなった豆腐を箸で食べようと試みる。
しかし、豆腐が小さくなるばかりだ。
「はいはい。ヒュア君。あーん」
菊代は自分の受け皿にあった豆腐を食べやすく一口にすると、それを器用に箸で掴み少しだけ身を乗り出してヒュアの口元へ。
「っ!」
「ほらほら早く」
最初は赤面して、頑なに口を閉ざしていたが、菊代が急かすと小さく口を開き豆腐をぱくりと食べた。
「・・・美味しい」
「ふふっ、良かった。ほら、もう一口。あーん」
今度は素直に口を開けて美味しそうに咀嚼する。
「菊代さまっ。ぼくもぼくも」
「はーい、あ〜ん」
「あーん・・・・じぶんで食べるよりも・・・おいしい」
「ふふそれは良かった」

ほくほくとした表情で食事をする二人を見て明日の料理は何にしようかなと考えていた。








食器を洗っているとぽすっと軽い衝撃を感じた。
視線を下に落とすと嬉しそうな顔で見上げるルルが居た。
「どうしたの?」
「あの・・・ね、あのね。ぼく、おーきくなったらね・・・菊代さまとけっこんするっ!」
「・・・え?」
「は?」
隣で食器を拭いてくれていたヒュアが固まり、無表情しか知らない国の者が見れば驚くであろう程、怒りの感情を露にしていた。
だが、菊代はルルの方に向いているし、ルルからは菊代が居てその表情は見えなかった。

「ぼくねっ・・・菊代さまとけっこんするの!ぼ・・・くがしあわせにするの!」
「ふふ、すっごい嬉しいなぁ」
体をくねくねしながらそう言うと可愛らしい声を上げてより一層抱き着いてきた。
「!?・・・俺が、菊代さんと・・・結婚する」
「え?ヒュア君ももらってくれるの?」
「勿論です。世界一幸せにしてあげましょう」
「うわー私モテモテ!」
どっちに貰ってもらおうかな?と言いながら食器を洗ってる後ろで二人が睨み合っていたなんて菊代は気づかなかった。








あとがき

何だか、今なら、全国のお父上の娘に「パパと結婚するー!」って言われた時、言われたい気持ちが分かりますね。
最後、睨み合ってるってところがあれですね。
超超超怖いヒュアに負けじと睨み返しているけど、すぐにへにゃって涙目になるんでしょうね(笑

もしよかったらどうぞ↓








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