誓契

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番外編



お題 リライト
10のちいさな幸せ より

----あたたかいココア----







「はふ・・・・」

息を吐くと白く濁る。
悴んだ手を擦り合わせて摩擦熱で温めようとするが中々上手くいかない。
今つけたばかりで、まだまだ温かくないストーブの前で縮こまる。

朝の6時。
ちょっと早めに起きてしまい、眠くも無いのでリビングに来たのだが、身が竦む様に寒かった。
それもそうだろう。
冬なのだから。

「は〜や〜く〜」
かちかちと歯が鳴る音と共に急かしても、機械は答えてくれない。
じじ・・・と燻る音しか聞こえない。
「菊代・・・さん?」

うーうーストーブの前で唸っているとひょっこりと顔を見せたヒュア。
ヒュアが息をする度に空気が白濁する。
寒さに慣れているのかちっとも寒い素振りを見せない。
ちょっとだけ温まり始めたストーブの前で蹲っている菊代に近づくとちょこん、と寄り添うように隣に座る。
「寒いねー」
「そうですか?このくらいなら全然平気ですけど・・・」
「え?そう?」
「はい、俺のとこの冬はもっと寒いですよ」
それならこのくらいの寒さはどうって事は無いのだろう。
関東圏のこの地域。
東北に比べたらまだまだましだ。
それでも菊代にとっては十分寒い。

「そうだ・・・」
徐に立ち上がると身を小さくしたまま台所に素早く向かう。
戸棚を開け真っ白いマグカップを1つ取り出す。
もう1とつ取り出したマグカップには茶色い熊とその熊の下に英語の文字が可愛らしく並んでいる。
本物の熊とは掛け離れた可愛らしい絵柄のマグカップ。

他の戸棚から焦げ茶色の粉末が入った容器を取り出し、スプーンで掬い、マグカップにさらさらと零す。
ポットのお湯を注ぎ、ちょっとだけ牛乳を加えればあったかーいミルクココアの出来上がり。
白い煙を燻らせて甘い匂いをふんわりと漂わせている焦げ茶色の液体。

並々と注がれたココアを零さないように此方を不思議そうに見ているヒュアの下へ。
火が点いたのか、赤々とした光がストーブの奥の方で見える。
先程よりもストーブの周りの温度が格段に上がっていた。
あまりに近づきすぎても危ないのでちょっと離れた位置に座り、熊のイラストがプリントされたマグカップを渡す。
不思議そうに中身とマグカップを交互に眺めているヒュア。
「ココアって言って甘い飲み物なんだ」
「確かにとても甘い香りがしますね・・・いただきます」
「どうぞ、熱いので気をつけてね」
小さくマグカップを傾けて口に温かく甘い液体を注ぐ。
口に入った途端に広がる強い甘さ。
喉を滑り落ちると、冷たく凍っていた体の芯が解き解される様に温まる。
その様子を優しい表情で眺めている。
「美味しいでしょ?」
「はい、とってもおいしいですっ」
本当に美味しかったのか、ちょっと興奮したように瞳を輝かせて此方に向き直る。
最近表情が出てくるようになったのでとても喜ばしいことだ。
熱いココアで舌を火傷しない様にちまちまと飲むヒュア。
その姿をじっと見ている菊代。
菊代の熱い視線に気がついたのか、頭を傾ける。
「・・・ヒュア君可愛いーーー!」
撫で回したい衝動に駆られるが、ココアを持っているので何とか踏みとどまる。

可愛らしい熊のマグカップをはふはふと息を掛けながら飲む姿はとっても可愛い。
もとより容姿は抜群にいいので、熊のマグカップがとっても似合う。
頬が少し赤らんでいるのも可愛さアップに貢献していた。

「か・・・かわいい・・・!?」
言われ慣れない言葉にあたふたする様子も可愛い。
会った初めの頃より表情が富んでいる為可愛さ倍増だ。
「うん、可愛いっ」
コップを横に置くと、柔らかく手触り最高の頭を撫で回す。
初めやったときは嫌がられるんでは?と不安になったが全然そんな感じがしないので良かった。
硬かった表情が柔らかく解れ、ヒュアは笑みを浮かべた。







あとがき

11月中旬くらいでしょうか?
ちょっと未来設定のお話ですねー
ヴィルリアーテはまだ夢の中です(笑

実はこれを書いたのは春です(笑
もしよかったらどうぞ↓









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