誓契

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番外編


※凌辱表現があります。














一緒に居れば居るほど、時が経てば経つほど、恋慕の情が強くなった。
しかしシアはウェルデのことを、男として見ていなかった。


焦らずゆっくり、自分を男と認めさせれば良いと思っていた。
それにシアは自分のことを異性としてではないが、好いてくれている。
それで十分だと自分に言い聞かせていた。
そうしないと、この胸の内を吐露しかねなかったのだ。


因みにシアのイジメはぱったり無くなった。

俺が父上に言って、イジメに関していた侍女を全て辞めさせたからだ。
父上は兄弟の仲で一番優秀な俺を好んでいたから願いを聞いてもらうのは造作も無かった。

シアは真面目で素直で明るい性格だ。
そんなシアが嫌われるわけなく、シアの交友関係を邪魔していた輩は居なくなったので、元通りよりも良い状態になった。

前みたいに屈託無い笑顔を見せてくれるようになってウェルデは心底喜んだ。


しかしある日、勉学が捗らず苛々しているとき、商人らしき若い男と楽しそうに話しているシアを見て今まで我慢していたものが爆発した。


庭に居たシアを引っ張り、驚いている彼女を無理やり自分の部屋に連れて行った。

部屋に入るなり、喚くその口をキスで塞いだ。
シアはもがいて俺を押したがそれで俺がやめるわけもなく、腕を壁に縫いとめて拘束した。
角度を変えて深い口付をすれば、見るからに慣れてないシアは頬を真っ赤にして目を見開いていた。

息を吸うタイミングが分からず、酸欠になりそうだったのでシアから離れる。
勿論拘束したままだが。

「ウェルデ様!悪戯が過ぎます!!」
咳きこみながら怒鳴るシア。
「いたずら?はっ。今まで我慢してきたけどもう無理だ。
シア、シア愛しているんだ。君のことを心の底から」
「ウェルデ様・・・それは愛ではなく、親愛ですよ。
いつも一緒に居たから親愛を愛と間違えてしまっただけですよ」
「シアの洋服を引き裂き、その豊満な胸に顔を埋め、体に俺を刻みたいという思いが親愛だと?
なら、今頃母と息子との子供が巷に溢れ返ってるだろうな」
シアは息を呑み固まると俯いた。
ウェルデが性的な目で自分を見ていると気づかなかったのだろう。
「一生大切にする。愛するから、だから」
「ウェルデ様」
俯いていたシアは顔を上げると凛とした眼差しでウェルデを見上げた。
自然と上目遣いになったシアはあまりにも愛らしく、湧きあがる欲望を理性で押さえて言葉を待つ。

「正直に申しますとあたしはウェルデ様のことを異性として感じられません」
分かっていたことだったが面と向かって言われると心を抉り取られるようだった。

「それに成人してない子供と関係を持つのはあたしの倫理に反します」
「・・・」
「だからと言って断っても貴方は納得いかないでしょ?」
ウェルデが頷くと眼差しが柔らかくなった。
「だからウェルデ様が成人になるまで返事は待ってほしいの。
時間を頂戴。
もしかしたら成人するまでにウェルデ様を愛せるかもしれないし。
それにウェルデ様が成人してもまだ私のことを好いているかどうかわかりませんし」
「何年、何十年経とうがこの思いは変わらない!」
「分かったわ。でも時間を頂戴」
「・・・良いだろう」
「ありがとう、ウェルデ様」











そして15歳になり、成人した。
成人の儀を済ませ名を『クェル』に改めた。
成人を祝うパーティーも早々に抜け出して部屋に帰ってしまったクェル。

後で父に叱られるであろう。
なんせパーティーの主役が居なくなってしまったのだから。


部屋に入り、堅苦しい正装の上着を脱ぎ捨てシアの名前を呼ぶ。
すぐに隣の部屋から現れたシア。

緊張しているのか少しばかり面持ちが固かった彼女は仰々しくお辞儀をした。


あぁ、どれほど・・・この時を待っただろうか。

やはり、この思いは廃ることなく燃えている。

クェルは早くこの思いを伝えたくて体がうずうずしていた。



「クェル様、成人おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう、で・・・返事を」
「あたし婚約します」
「・・・・は?」
婚約?
こんやく?

遮って紡がれた言葉はとてつもない衝撃を与えた。
呆然としているクェルに畳み掛けるように早口で言う。

「あたしと貴方では家柄も容姿も何もかも釣り合わない。
将来あなたの妨げとなるのは目に見えている。
あと・・・やっぱりあなたのことを男性として見れないです。
それに私がいつまでも傍にいるのが良くないと思うの。
で、丁度お母さんが見合い話を持ってたんです 」

婚約という言葉から後はまったく聞いていなかったクェルは気付いたらシアの肩を強く掴んでいた。
シアは奥歯を噛みしめ眉根に皺を寄せる。

「い・・・痛いです、クェル様」
手をどけようと腕を押すがまったく動かない。
シアは目線を上げてクェルの瞳を間近で直視して後悔する。
人間の持っている獣に近い欲望を感じさせる瞳。

ぞわりと鳥肌が立ち、寒気がした。

「許さない」
「え」
「は・・・ははは。別にシアの返事なんて待ってないんだよ。
こちらは貴族、シアを妻にすることなんてシアの同意などなくても・・・できるんだよ」
「クェル様・・・?」
「シアは俺の愛しい人・・・誰にも渡さない!」
「クェル様!!??」


今まで手を出さなかったのは愛しい人を傷つけたくなかったから。

それに、答えを聞かなくともシアは自分のことを受け入れてくれると思ってた。


それが婚約?


許さない。




愛しいシア。





シア。












クェルが我に返って初めて目にしたのは、乱れたシーツの上で泣きじゃくるシアだった。
馬乗りになり、シアを押し倒した姿勢で固まっていた。

ベットの上にはメイドの制服や女物の下着が破かれて散らばっている。
シーツを握りしめている手首は赤くなっていて、自分が押さえつけた痕だとすぐに分かった。
そろりと視線を下にやると白濁の液体に交じって赤い液体が染みを作っていた。

彼女が処女だったという嬉しさが湧きあがってくるが、シアの涙を見るとそれもすぐに萎んだ。

「シアっ・・・すまない・・・すまない!」

クェルは泣き止まないシアをそっと抱きしめた。
強張りきった体は震えていた。


「酷い・・・ひどい・・・」
「すまない、本当に・・・すまない」
「嫌いです・・・あなたなんか嫌いです」
「っ・・・」

確かにそう言われても誰も非難しないであろうことを自分はしてしまった。
しかし、愛しているシアからの嫌悪に満ち溢れたその言葉はクェルの心をずたずたにした。


それでも・・・クェルはシアを離すことはできないのだ。









城に正式に務めることが決定した。
普通城に在住する軍人は首都コレイアにある軍学校の卒業生が殆どだが、クェルのように学校に行ってなくとも軍に入ることはできる。
軍に入るのは渋ったが、当主である父の決定で流石に逆らえなかった。

アダソン家が治める土地は城があるコレイアと遠い。
別荘が南区『ロト』にあるので、そこから通うことになる。


俺はシアを連れてコレイアに向かった。
いつまでもシアに首っ丈なクェルに父は良い顔をしなかったが、結局シアを連れて行くことに反対されなかった。

シアはあの日から俺に笑顔を見せなくなった。
それどころか会話もまともにしてくれない。

それはとてもとても辛かったが・・・ゆっくり、ゆっくりと愛を育んでいこうと思った。



どこの馬の骨とも知らない男の婚約話は決定事項では無かったため、フェネル家は大貴族であるクェルからの申し出に喜んで食いついた。
結婚を勧められたが、シアの精神状態を考えると危なかったので、婚約だけしておいた。

クェルのような貴族は普通なら親が婚約者を決める。
しかしアダソン家は子供が多かった為、末子であるクェルに政略結婚をせまらずとも他に子供が居たので婚約を許された。

ただの平民の娘をアダソン家に迎え入れるのは高貴な血を汚すこと。
ガネフィはそのことで少し反対はしたが結局折れた。

シアのことを嫌っている母は嫌そうな顔はするが、クェルのことを怖がってるので何も言ってこなかった







軍に配属され、最初は辛かった。
幾ら貴族で、方術に才能があったとしても、クェル程度の力を持つ者はごろごろ居た。

下っ端は大変で、家に帰れない日もあったがシアの顔を見れば疲れなんて吹き飛んだ。
毎日お土産を買って行き、甘い言葉を囁いたが相変わらずクェルを冷たくあしらう日々が続いた。


しかし、ある日昇進したことを告げるとシアは我慢しきれない感じで立ち上がり、あの明るい笑みを見せてくれた。
その小さな手でクェルの節くれ立った手を強く握った。
「おめでとうございます!」
「シ・・・ア・・・・?」
「あっ・・・!」
はっとしたシアは慌てて俺の手を離し、椅子に座る。
俯きながらスカートの皺を直し唇を噛みしめているシア。

「シア?今・・・」
「知りません、喜んでません。ちっとも嬉しくないです」
「シア」
抱きしめようと手を伸ばしたら叩き落とされた。
ちくりと胸が痛んだが構わず抱きしめる。

「や、やめてください!」
「シア、たとえシアが俺のことを嫌っていても嬉しかった。凄く嬉しかった」
「嫌いです、自分勝手なクェル様なんて嫌いです」
「本当に?」
「・・・本当です」
そう言ったシアの瞳は濡れ、揺れていた。






それから徐々に二人の距離は縮まっていった。
今まで、大勢の中で生活をしたことのなかったクェルは切磋琢磨し、どんどん昇進した。
昇進するとシアが凄く褒めてくれたのもクェルが頑張れた大きな一因だろう。

19歳の時、少佐に昇進した時、結婚を申し込んだ。


「シア。俺にはシアが必要なんだ。シア。愛している。君を一生愛する。結婚してくれ」
「私は貴方が嫌いでした」
「あぁ」
「でも・・・結婚を了承します。拒否してもどうせあなたは離してくれないでしょうし」
「シア!」
呆れたように笑うシアをクェルは思いっきり抱きしめた。
痛がってクェルの背中をばしばしと叩いていたが、その顔は幸せそうだった












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